鯨紀行

主に旅行記と、日々の思ったことを少々。

ユージェンとヨシムに教えられたこと

サマルカンドでプロフを食べようと入った店では、英語がほとんど通じなかった。出来上がりまで30分ほどあるようで、とりあえず席に座って待ってろ、というようなことを言われて待つことに。

「もし良ければ、こちらのテーブルに来ないか?」

そう声をかけてくれたのが、ロシア人であるユージェンとヨシム。正直、注文するにも苦労しそうであったため、お言葉に甘えることに。

 

待っている間にいろいろと話した。ふたりとも23歳で、最近働き始めたらしい。ロシア人だが生粋のタシュケント育ち。サマルカンドは今回初めての旅行らしい。ちょっと意外。正直そこまで遠くもないと思うし、旅が嫌いというわけでもないようだから、もっと小さいころから来ていてもおかしくないと思ったのだが。

 

ロシア人はこの国では5%程度のマイノリティであること。国の中でマイノリティというのは、どんな心境なのか、というようなことを訊いてみたのだけれども、「(英語だと)言葉にするのが難しい」という回答。まあ、そうだよね。

 

「日本人は外国人が嫌いだという話だが、本当かい?」なかなか困る質問。そういう人もいるね、という無難な回答をしてしまった。自分はどうだろう。確かにあまり好きではない部分はあるけれども、そうでもない部分もある。とりあえず思うのは、

・ツアー客などのうるさい連中が嫌い
・観光地でもなんでも、混むのが嫌い
・もしひとりきりで道がわからなかったりしたら積極的に助けてあげたい

という感じなので、好きな部分と嫌いな部分、どちらもありそうだ。

 

かくいう彼らも人混みが嫌いらしく、隣のグループがうるさいのが嫌だと愚痴っていた。静かに食べたいんだけどな……という姿にちょっと親近感。孤独のグルメを愛する者どうし、ちょっと気が合ったのかもしれない。


その後の話だが、少し(300円程度)ぼったくられそうになったときに、まあ面倒だからいいかと思って払ってしまおうかと思ったのだけれど、ユージェンがなんとか防いでくれた。そのときの彼の言葉が忘れられない。

ウズベキスタンでは、一般的な人の日給は 5~6$ 程度だという。つまり、300円というのは半日分くらいの金額になる。ここにはとにかくボッタクろうと考える輩がいるが、金額の大小にかかわらず払わずに済むならそうすべきだ、と。

自分ももちろん同意見ではあるのだが、価値の差が想像以上だった。日本であれば、半日分といえば4~5000円くらいということになるだろうか。確かに、その価値は何も考えずにポンと出していいものじゃない。

 

調べてみたところ、ウズベキスタン購買力平価(PPP)や一人あたりの消費可能金額などは、世界約180ヶ国の中で120~140位程度なのだ。近いところではベトナムあたりが同位置。そして日用品の物価などで考えても、大きなパンが25円程度だったり食事も200円かからずに食べれた、タクシー代も正規の値段でもかなり安く、お金の価値の差がよく分かる場面が多い。

日本人の自分は、この国ではその価値の差をバックにかなりの自由ができるのだが、ここに住む人達はそういうわけにはいかないのだ。そしてそれは、ただ単に生まれた国が違うことだけが理由になっている。

なんなんだろうな、これは。そう思った。今までも物価の差が大きい国(ベトナムとか)には行ったことがあったけれども、なぜかこのときの感覚は今までのどの国とも違っていた。なんだかやるせないような感覚。自分がそんなに大した人間でもないのに、なぜか力をもってしまったかのような気分。


プロフを一緒に食べた後、グリ・アミールのモスクに行くけどどう? と誘ってもらい、タクシーに一緒に乗っけてもらう。モスクではガイド的なことまでしてもらったりと、まるでガイドのようだった。「君は僕らのゲストだから」と。なんか本当にありがたすぎて、言葉にならなかった。感謝しかない。

 

最後に連絡先を交換して別れた。いつかまた会えたら。