鯨紀行

主に旅行記と、日々の思ったことを少々。

広重ビビッド

ちょっと気になっていた展覧会で、たまたま招待券を頂けたので行ってみた。

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初めて知ったのだけれども言われてみれば確かにその通りで、版画というものは何枚も刷るので初期の頃とその後では色合いが異なってきたりもする。初刷りは作者本人も色合いをチェックしたりするので、色彩や刷り方などもかなり気合いが入ったものになるそうだ。

歌川広重の初刷りを蒐めたものが今回の展示。広重といえば浮世絵では有名な作品が多く絵柄は知っているものも多かったが、間近で見ると色々な発見があって面白い。解説も読みながら見ていくとなおさらで、さらに本当に鮮やかな版画の世界には時間を忘れて没頭してしまった。

60枚ほどの<六十余州名所図会>だけでもかなり見応えがあるが、他にも沢山の作品があり、全部を見ていくと少々疲れてしまうほど。これは半日よりもっと時間をかけながらゆっくり見ていく方が良かったと、時間の無さを少し後悔した。

それにしても、広重の構図は独特なものが多くて結構驚かされる。鳥居や富士山を半分でぶった切る構図とか。また、上下のぼかしは周辺光量落ちのように画面中心を際立たせる効果がありそう。滝の流れを版画の木目を使って表現していたりするところも素晴らしい。

この展示を見るにあたっては、今より若いとつまらなかっただろうな、と思う。日本の各地の名所がでてくるのだけれども、行ったことがある場所も多く、だからこそその場所が当時はどんな風景になっていたのか、想像と比較をして愉しむことができた。

これはその場所を実際に見ているから分かることであって、経験がモノをいう。実際、行ったことのない場所は少し興味が薄れるし、逆に行ったことがある場所はやはり見ていて楽しい。こういうのは歳をとった方が、経験値が高い人の方が楽しめるものなんだな、というのが新しい発見だった。

何時間も待って若冲を観るのも良いけど、あまり混んでない広重を観る方がオススメです。