鯨紀行

主に旅行記と、日々の思ったことを少々。

秩父ウイスキー祭2014 秩父蒸留所ツアー

ここ数年開催されている「埼玉ウイスキーセッション」の会場は、今回はなんと秩父神社境内。秩父といえば、ウイスキー好きは御存知の通り、秩父蒸留所のお膝元。今回はウイスキーの試飲やセミナーだけではなく、蒸留所の見学も特別に開催されました。

まず1日目の秩父蒸留所見学ツアー。先日の大雪の影響で西武秩父線が運行できないのではないかと考えていましたが、前日になんとか全線開通。関係者の方々に感謝です。そうして降り立った秩父は、本当に大雪で大変なことになっていました。街中にもうず高く積まれた雪。郊外に出てみれば、重みで潰れてしまったビニールハウスなどが多く見られました。そんな雪景色の中を、ツアーバス秩父蒸留所へ向かいます。

蒸留所は、確かにクラフトディスティラリーらしく割と小ぢんまりとしてはいますが、それでも結構な規模を持ち、建物もしっかりとしています。メインとなる粉砕~仕込み~蒸留までを行う建物の他、キルンのある建物(製麦としては未使用)、貯蔵庫、フロアモルティング用の建物、製樽用の建物、そして事務所と、ひと通り揃っていますね。フロアモルティングや製樽は当初はやっていなかったはずなので、どんどん拡充されていっている、まさにワークインプログレスといった感じです。

社長の肥土伊知郎さん自ら、ウイスキーの製造工程にしたがって説明して頂きました。特に印象的だったのは、ミズナラでできた発酵槽と、蒸留したニューポットを樽詰め前に貯蔵するための大きな樽。奥がミズナラ、手前がフレンチオークのワイン樽だそうです。ユニークな外観に皆さん釘付け。

貯蔵庫には1000樽を超える樽が眠っています。空調を使わず、地面を土のままにするなど、秩父の自然をしっかりと反映させるような取り組み。冬場はあまりウイスキーの香りはしませんが、代わりに土や木の香りが漂っていて、まさに自然の中にいるような気分になりました。

秩父蒸留所が稼働し始めてから5年。様々な結果が製品として出てきていますが、どれも短熟とは思えないほどしっかりとした味わいがあります。肥土さんの説明を聞いて思ったことは、ウイスキーを作るにあたって、しっかりとした情報や試行錯誤の上に、確固たる方向性を持っていること。例えば発酵槽の材質からポットスチルの形状、貯蔵庫での配置や空気のことなど、どういう製品をつくり出したいかをしっかりとイメージしている。行き当たりばったりではない、堅実な作り方が、高いクオリティに繋がっているのだと思いました。

秩父蒸留所はまだ発展途中ですが、既に品質としては良い物を出してきています。でもやはり、10年を超える製品が出てくるのが待ち遠しい。今の品質に、しっかりとした熟成感が乗ってきたらどうなるのか。あと5年以上ありますが、本当に楽しみですね。