鯨紀行

主に旅行記と、日々の思ったことを少々。

C.W.ニコルのスコットランド紀行

WHISKY―C.W.ニコルのスコットランド紀行
C.W. ニコル
徳間書店
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C.W.ニコルという名前は昔から知ってはいるものの、何故か本を読んだ記憶が無い。でも確かに小学生か中学生頃から知っている。きっかけも分からないので謎だけれど、日本人には知名度は高いんじゃないだろうか。

さて、そんなニコル氏がウイスキーの本を出していたとはつゆ知らず。たまたま図書館で見かけて借りてみたら面白かった。氏がスコットランドを旅行したのは1982年。その当時、蒸留所を訪れることがどれほど難しく、稀有であったことだろうと思う。今でこそ、蒸留所がビジターセンターを構えるのは普通になったけれども、当時はそのような施設を持っているところは稀だったと思うし、蒸留所の見学自体、今とは比べ物にならないほど大変だったことだろうと思う。

訪れる先々で彼が良く呑んだという、各蒸留所の12年もののシングルモルト。逆算すれば1970年ころ。場合によっては1960年代の原酒も使われていたことだろう。当時の12年ものは、現在の12年ものと比較すれば恐ろしく高品質なものだったと想像する。現在のウイスキーは収量を重視するあまり、その品質は昔のものに及ばないと考えられているし、(年数が経っているので単純な比較はできないが)実際、昔の12年ものは味わいが濃厚で驚くほど。

しかし、ニコル氏が訪れた当時でも「今よりも昔の方が高品質な作りをしていた」という。その最たる証拠として上げられているのが、スピリットセーフ(蒸留した液体が流れてくる場所)に流れ落ちてくるスピリッツの速度なのだそうだ。昔は滴りおちるようにゆっくりだったものが、今は流れ落ちるように変わっていったらしい。

昔の方が良かった、というのは往々にして言われることだけれども、少なくとも昔と今の作り方は違うのだろう、ということが分かる。あまり厳密に色々と書かわている本ではないが、当時の蒸留所の様子を知ることができる資料的な価値もある一冊だった。


さあ今日もウイスキーが旨いぞ。 スランジ・ヴァー!