富山石川巡り 能作 本社工場
五箇山からの帰りに寄ったのは、錫器で有名な「能作」の本社工場。
高岡には銅器や錫器など、モノの製造を行う会社が多く、銅器は日本の9割を賄うほどだそうだ。梵鐘などの大型銅器、鋳鉄などは高岡の技術が無くなったら日本どころか世界的に大損失になるほどのものだという。
以前、能作の蚊遣りを持っていたことがあった。たかが(といっては失礼だが)蚊遣りのはずなのに素晴らしいフォルムで一気に惚れ込んでしまって、それ以来、能作という会社のプロダクトは気になっていた、というのがここ15年くらいだろうか。
そんな能作の本社工場がここにあるということで、ちょうどいいと思って寄ってみた次第。
工業団地のような場所の一角にある、工場兼ショールーム兼カフェ。建物のデザインも落ち着いた雰囲気の中に先進性のようなものが見れる。良いデザイン。
建物の中に入ると、様々な錫器の鋳型がずらりと並んでいて圧倒される。どことなく、スコットランドでマッカランの蒸留所で見た光景とリンクするような感覚。こちらの方が、お金持ちアピール感が無くてもっと良いけれども(笑
2階からは、製造現場を窓越しに眺めることができた。あたりには金属の焦げた匂いが立ち込めていて、溶けた錫は薄く緑に色づいた黄色の輝きを放っていた。炎色反応だろうか。ものすごい高温なのだろうな、ということが作業している人たちの表情から分る。
鋳型のインスタレーションや製造工程のビデオクリップなどがあり、錫器の製造と能作のコンセプトのようなものが伝わってくる。あまり大きな空間ではないものの、必要十分な説明をしてくれていた。
錫器を作る体験もできるようで、これは時間があるならぜひやってみたかったな、と。数人の方が作っているのを遠くから見てみて、かなり面白そうだった。子供連れなら良い経験になりそう。
ショップに並ぶ製品の数々を見ていて、やはりどれもデザインの良さを感じる。有名な一輪挿しの「そろり」の佇まい、シンプルな美にしばらく見とれてしまった。
こういうのが似合う部屋というのは、逆に難しそうだ……。
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この後、車で富山市へ戻った。散居村が見える展望台で夕暮れを待つつもりでいたものの、どうも体調があまり良くなかったのと、雲が集めできっと夕焼けにはならないだろうな、と思ったため。体調不良は、この日だけ急に気温が低くなったからかもしれない。
体調の大事をとったわけなのだけど、レンタカーを返してホテルを向かう途中で、どんどん夕暮れが良い色合いに染まっていく。え、まさか、と思っているうちに、素晴らしいグラデーションに染まる空が……。こういうときの悔しさといったら無い。
しかたなく身近に見える景色で夕焼けを満喫しようとあれこれ試してみる。富山城の堀で泳ぐ水鳥の動きが面白かったが、少し消化不良感。
レンタカーも借りてあって、時間も十分あり、これだけお膳立てしておきながら当の場所に居なかったというのは、本当にもったいない。こういうこともあるから、軽率に決めつけないように今後は気をつけよう。